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先日、アースフレンズ東京Zに初のGM(ゼネラルマネージャー)職が配置された。
喜ばしい限りであるが、そもそもGMとはどのような役割なのか、そして何に責任を持つべきなのか。
例えば、選手人件費がリーグ平均の半分しかなくて、勝ち星も平均の半分ならそれは「失敗」なのだろうか。
反対に、人件費をリーグ平均の1.5倍かけたのに成績が昨対比1.2倍にしかならなかった場合は勝率と勝ち星は伸びているとはいえ「責任を果たした」ことになるのだろうか。私はならないと思う。
ということで今記事は、GMの役割と責任について書いていきたいと思う。
ちなみにGMについては業界でもはっきりしていないし、指標があるわけではない。増しては業界人ではない私が考えたものであるため、業界人の方が見た際はこっそりと指摘していただければ幸いです。
ファンの方は自分なりのGMの考えなどをSNSで書いてもらえれば色々な人が考えるきっかけになると思うのでぜひチャレンジしてほしい。
■結論■
さて、早速だが結論を書く。
役割は「勝利の期待値を大きくする為の予算確保以外の全ての準備を行うこと」
責任は「コート人件費の費用対効果を高め、投資に見合った成績を残すこと」
一つ一つ説明していくので、お付き合いください。
■前提■
まず前提を揃えたいと思います。
・コート(選手、コーチ、スタッフ)の目指すべきことは「勝利」である
なぜ目指すべきものが「勝利」なのかは長くなるので割愛して、ここでは球団に求められているからとする。勝てば選手も、ファンも、球団もうれしい。
・球団がコートに求めるものも「勝利」である
これには2つある。
一つは、球団の社会的な役割。エンターテイメントは「人の心を動かす」産業である。だから心を動かす為の重要な要素になる「勝利」を求める。要は存在して観客がハッピーにする役割を担う。
もう一つは現実的な話。勝利は観客により良い体験を提供し、集客と対価としてのお金をいただくからである。そして観客が集まってくれば、そこに対してのスポンサーへの提供価値も大きくなり、売り上げに繋がる。だから求める。
・基本的に勝利数(勝率)はコート人件費と相関する
上記2つで書いたように「勝利」をもたらす要素は需要が高く価値も高くなる。その為、勝つ為に必要な能力・経験を持つ選手やコーチは相対的に年俸が高い。そして選手やコーチなどが組み合わさってできるのがチームであり、チームを維持する費用がコート人件費である。
この辺りは一般企業と同じで、未経験を10人揃えるより、経験者を10人揃えた方が結果は出しやすく、人件費も高いというわけである。 ※今回は知名度などは一旦置いておき、競技能力・経験という点のみを主な要素とする。
この前提のもとに話をしていく。
■GMの役割■
私はGMの役割を「勝利の期待値を大きくする為の全ての準備を行うこと」だと思っている。
要は勝率の高いチームを創れ。ということだが、勝率の高いチームとはなんぞや?となる。
私は勝率の高いチームは以下の方程式で作れると思っている。
勝利の期待値=選手の勝利の期待値×コーチ陣の勝利の期待値×ケミストリー(準備)
ちなみに期待値と言っておきながら数値ではない。市場内の相対評価かつ人の数値化はできないしろくなことにならない。あくまで目安である。
・選手の勝利の期待値
前提で書いた通り、選手が持つ勝つ為に必要な能力・経験への期待値だ。スタッツや勝率と性格や身体能力、経験を総合したもの思ってもらえるとイメージしやすいかと思う。
・コーチ陣の勝利の期待値
選手同様、コーチが持つ経験や知識、コミュニケーション・マネジメント・人心掌握力などを総合したものである。
・ケミストリー(準備)
練習時間や内容、コミュニケーション量や互いの理解度など、いわゆる「阿吽の呼吸」になるまでのすべての準備を総合したものである。
つまり理論上は最高年俸の選手12人と契約して、最高年俸のコーチとスタッフを揃えて、最高の環境と準備期間を与えればほぼ100%勝てるということになる。
が、実際は予算や時間や環境に制約がある。その制約の中で最大限勝率を高められる準備を行うのがGMの役割というわけだ。
予算内で獲れる選手、コート、スタッフの最適な形を考えて契約まで漕ぎつけ、契約した選手たちのケミストリーを高めるための体育館、ジム、ケア、MTG、食事内容、練習期間などを整える。その為に適宜フロントに交渉や理解を求める。その為の権限と責任をGMは持つのである。
▲余談▲
アルバルク東京のルカHCが契約解除して退任したのは、本人の意思を尊重したうえで間違いだと考えている。
コロナ禍という不確定要素は等しく降りかかるものであり、コントロールが出来ない条件は同じである。
選手のケガも同様であるが、そこをマネジメントするのはGMの役割である。
その辺りの役割と責任についてはフロントもGMも認識を合わせて置くべきだと思う。
■GMの責任■
GMの責任は「コート人件費の費用対効果を高め、投資に見合った成績を残すこと」
では、役割は分かった上で責任はどこまでなのだろうか。前述した役割を最大限行うことは大前提として、その上でどのような評価をもって責任を果たしたといえるだろうか。
私はコート人件費と成績の2つの要素からその役割の責任を果たしたといえるかを判断すべきであると思う。
コート人件費と成績の2要素を選んだ理由についてはそれぞれ以下の理由がある。
コート人件費
人を雇うにはお金がかかるからだ。
コートは12人の選手とHC、AC、マネージャー、チームドクター、トレーナーという人を、最低限揃える必要がある。
つまりこの揃えた人達が提供する価値の対価としてお金を支払わないといけない。
極論コート人件費0円なら役割を果たしようがない。
社長やオーナーは「金が無い」と言えるが、GMは言えないのが資本主義とマネジメント職の辛いところである。
※ちなみに一般的なプロリーグでは最低限の環境は球団で用意し、かつそれはGMの就任とは関係しない為要素からは除外した。
成績
これは明確に「勝利」を表す結果であるからだ。しかし、この成績も相対する他球団のコート人件費と自チームの人件費を鑑みて適正な成績を基準にすべきだと思う。
コート人件費が100万円しかないチームに1億円あるチームで同じ勝率を求めるのは、自由席の価格でコートサイド席ではないと文句を言うほどに愚かなことである。
対価に見合った便益しかもらえないのは世の常である。
適正な基準も考えたので求め方は後述する。
以上の理由からコート人件費と成績を責任を判断するうえでの要素に設定した。
■GMの評価基準
では、成績を評価すべき上でのコート人件費を鑑みた適正な基準をどう作ろうか。
私は1試合にかけるリーグのコート人件費の平均を基に、人件費の勝利数に対しての効率で適正かを見るのが良いと考えた。
平均的なコート人件費は、カテゴリーのコート人件費総額/そのシーズンの総試合数で求める。
例えば、総人件費が10億円で、試合数が100なら一試合の平均的なコート人件費は1,000万円である。
ちなみに20-21シーズンはB1は1,359万円、B2は457万円だった。(RS B1 20チーム600試合、B2 16チーム480試合)
チケットと物販、FCだけではペイできない額である。スポンサー様様だ。
なぜ平均的なコート人件費を基に考え始めたかというと、
試合を「白星を人件費で入札しあうゲーム」と考えた時、1試合に対していくら使ったかを平均単価(一試合の入札平均単価)で割ることで、人件費の効率=GMの手腕(いかに人件費を効率的に使い白星を手に入れたか)が求められると考えたからだ。
公式としては、以下の通りとなる。
各クラブが記録した勝数*試合平均単価/そのクラブのコート人件費=コート人件費効率
特定の勝数を得るために必要なコート人件費を求める場合は、
その上で各クラブの勝数と欲しい勝利数の差分*試合平均単価をコート人件費から増減させたものをそのクラブのコート人件費としてあてはめて計算した。
その結果が下記の通りとなる。表の右から2列目を見てほしい。
ポストシーズンに進出できた勝数としてB1は34勝、B2は30勝を基準にしたコート人件費効率である
(なお、20-21シーズンはコロナの影響で消滅試合が発生している部分については、編成時のシーズン当初では考慮してないと考えレギュラーシーズン60試合ベースの数値である。)
100%が人件費と勝数がの費用対効果がちょうどいい状態で、%が高いほど効率が良く、少ないほど効率が悪い。
B1コート人件費効率表

B2コート人件費効率表

特筆した部分に触れると、
B1では富山が225%と抜群の効率を示しており、反対に千葉、広島は59%と効率が悪いことが分かる。
B2では、山形が141%とTOP、福岡が75%とワーストである。
こう見ることで、以下のような考察をすることが出来る。
・富山は人件費のわりに勝数が多く良い編成であった。
・千葉は人件費をかけて勝数も多く、GMの手腕というより、人件費をかけることで勝利を獲りに来ている。
・広島は人件費のわりに勝数が悪く編成が芳しくなかったと考えることが出来る。
B2では、
・山形が人件費のわりに勝星を伸ばしプレイオフに進出している。GMをそのままにし、人件費を増やすことで費用対効果が高く勝数を増やせると判断できる
・福岡は人件費のわりに勝星を得ておらず、GMの交代や環境の充実を図るか、人件費を大幅に増加させることで勝星を増やせる
というように見ることが出来る。
20-21シーズンは面白い例がある。
熊本は順位こそ全体12位であるものの、効率は100%で人件費と勝数の結果が比例している。
その為、勝数を伸ばすには現GMの変更ではなく、人件費を増やす方が妥当であると判断できる。
このように、順位に囚われない評価が出来るようになるいい例である。
実際、熊本は翌21-22シーズンではコート人件費への投資を強化してプレイオフのセミファイナルまで進出した。(ま、そのGMはもういないのだが。)
▲余談▲千葉とA東京に関しては突出してコート人件費が高いので、必然的に効率は悪くなる。
リーグが成熟し、各チームの人件費がある程度同じ程度になってくるとこの効率の幅は小さくなっていくと思う。
このように、各球団が試合に対してどの程度お金をかけている(かけていないか)か、GMの手腕がどうなかがわかることでGMの評価ができる。
自身の応援しているクラブが人件費をかけていないから勝てないのか、GMや環境面、ケミストリーなど選手の素質以外に問題があるから勝てないのかは、下記表を参考にしてみると面白いものが見えるかもしれない。

ちなみに、アースフレンズ東京Zは全体15位と下から2番目なものの効率は82%とまぁまぁである。
ここから勝星を30個あげる為に人件費をかけるなら佐賀の1.6億円程度が必要(参考データが20-21シーズンのものなので実際はもう少し多め)であり、効率を挙げるなら腕利きのGMを入れ、環境を揃え、効率を156%にする必要がある。
現実的には人件費を1.3億程度、効率を120%にできるGMの活躍を期待するのが妥当かと思われる。
さて、締め方を忘れたが、ここまで読んでくれた方は感想をコメントがSNSにでもつぶやいてくれると嬉しいのである。
そして、来シーズンも楽しみましょう。